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食養生通信No5【秋の食養生】

22年10月13日

食欲の秋と言われますが、食べすぎは禁物です。秋と言えども、腹八分目を忘れないようにしてください。特に40歳以上の方は、エネルギー代謝が低下していくので、それまでと同じように食べていても、食べた物をエネルギーとして燃やす力が落ちてくるので、脂肪として身に付きやすくなっていくのです。

 

秋と言えば、栗やサンマ、マツタケに山芋、サツマイモに鮭、柿に大根、さらには人参や白菜などさまざまな野菜や魚などが美味しくいただけます。冬に向けてしっかりと栄養をたくわえる季節なのですが、現代の生活は真冬でも暖房が行き届いているので、昔のように寒い思いをすることはあまりありません。したがって、動物のように冬に向けて脂肪をしっかりたくわえる必要はないのです。しかし、秋は一年の内でも一番美味しい物が出てくる季節なので、ついつい食べすぎてしまうのです。いかに食べすぎないようにするか、そしていかに食べた物を効率よく燃焼させるかが秋の大きな課題となるのです。

 

食べた物を効率よく燃焼させるには、薬味をふんだんに使うことです。ショウガ、ネギ、ニンニク、ダイコン、トウガラシ、ワサビ、そしてカラシなどの薬味はどれも胃の働きをよくし、消化を促進して脂肪の燃焼を高めます。なるべく多く取るように心がけてください。逆に、体温よりも低い物を飲んだり、食べたりすることはなるべくひかえるようにしてください。また、本来夏場に取れる野菜や果物、南国地方で取れる物、白砂糖や乳製品は体を冷やすのでひかえるとよいでしょう。意外と知られていないのが、パンやパスタ、そして麺類の多くは小麦でできていますが、常温でも体を冷やすのです。小麦は陰性が強いので、特に冷えやすい方はひかえた方がよいでしょう。そして、生野菜やヨーグルトもひかえてください。体温を下げることが一番の禁物です。健康にいいからとか、体にやさしいと言ううたい文句に惑わされないようにしてください。体に入る物は何かしら、体に影響を与えるのです。年齢や季節、体質によってそれぞれ異なるので、自分に合っている物を見極める力を持つことが必要なのです。

 

現代の多くの人は、体を冷やす食材を多く取っています。冷蔵庫や冷凍庫の普及によってなおさらそれは強まっています。体温よりも低い物を取れば、まずは胃が冷えます。それが慢性的に続けば、胃はいつも冷えて、消化吸収する力が低下していきます。その結果食欲は低下し、ご飯をしっかり食べなくなっていき、お菓子やパンなどで簡単に済ませてしまうのです。そのため持久力や根気が低下し、覇気のない人間になってしまうのです。漢方では、胃が手足の筋肉を司ると考えます。最近の若者は手足が細くてスラットしています。見た目はよいのですが、持久力や根気が低下しています。冷たい物ばかり食べていると胃が弱り、手足が細くなっていくのです。手足の筋肉がしっかりついていないと体温も低下し、免疫力も低下していくのです。体温の多くは筋肉が作り出しているのです。筋肉がそれなりにないと、体温は低下していくのです。胃を冷やさないことがまずは大きな課題となります。冷蔵庫が普及するようになって、多くの人がさまざまな恩恵を受けるようになりましたがその反面、ひ弱な人を作り出すこととなったのです。
秋にしっかりと食べておきたいのが、新米です。できたら住んでいる所の近くで採れたものがよいでしょう。地産地消や身土不二という言葉がありますが、私たちの体には多くの細菌が共生しています。特に腸内細菌は、私たちにさまざまな恩恵を与えてくれています。この腸内細菌の種類は、人によって微妙に異なっているのです。つまり、その人が住んでいる土地に含まれている土壌菌と腸内細菌は密接な関係があるのです。土の中にはさまざまな細菌が住んでいますが、土地によってその種類やバランスは異なるのです。日本だけでも北海道と沖縄ではかなり異なっています。ましてや外国とくらべるとその地に含まれている土壌菌はかなり異なってくるのです。海外旅行に行って生水を飲んで下痢や腹痛で苦しむことがありますが、単に雑菌が含まれていたためではなく、その土地の土壌菌がその人の腸内細菌と著しく異なっていると、ある意味での拒絶反応が起こるのです。

 

今、日本はさまざまな国から食料を輸入しています。特に野菜や果物、そして小麦や大豆にトウモロコシなどを。安さが売り物になっている物もありますが、先ほど述べたように自分の住んでいる土地とかけ離れた所で作られた作物には、自分の腸内細菌とはまったく異なった細菌が付いている可能性があるのです。それは病原菌ではなく、どこにでもいる無害な細菌であったとしても、場合によっては下痢や吐き気、腹痛を起こす可能性があるのです。したがって、なるべく自分が住んでいる所の近くで栽培された作物を食べることが大切なのです。特に主食である米や小麦、そして大豆などは、まさしく地産地消にしなければならないのです。お米は何とかなりますが、小麦や大豆はなかなか難しいのが現実です。まずは国産のもので作ったパンや味噌を食べるように心がけましょう。そして、なるべく住んでいる所の近くで採れたもので作ったものを探して、少しずつそれを作っている農家さんやパン屋さん、味噌屋さんを応援していきましょう。

 

腸内細菌については最近の研究でいろいろなことがわかってきました。腸は第二の脳とも言われています。ある種の腸内細菌が作り出すホルモンが、脳の神経細胞を活発に動かしていることがわかってきたのです。それはセロトニンと言うホルモンで、脳の特に前頭葉の神経細胞をコントロールするホルモンなのです。セロトニンが足らなくなるとうつ的になり、精神的にも不安定になることがわかっています。さらに、セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料にもなるため、セロトニンが足らないと不眠症になってしまうのです。セロトニンを作り出す腸内細菌は、悪玉菌が増えるとその力を著しく低下させてしまいます。逆に、善玉菌が増えると元気に活動しだすのです。さらには、外国産の作物に含まれている異郷の地の土壌菌にも影響を受けやすく、とてもデリケートなところがあるのです。メンタルを安定させて毎日安眠できるようにするためには、腸内環境を整えなければならないのです。

 

腸内環境を整えることができると、最近はさまざまな乳酸菌飲料やヨーグルトが宣伝されています。確かにある程度の効果はあるようですが、その多くは元来日本人の腸内に存在していた細菌ではないため、基本的に定着しないのです。飲んでもすぐに排出されてしまうのです。そのため、毎に取らなければならないのです。それに、牛乳を原料にしているものが多いため、日本人の腸内細菌には不向きなのです。元々日本人は牛乳や乳製品を昔から取っていたのではないため、牛乳の一成分である、カゼインと言うタンパク質をうまく消化することができないのです。時々、牛乳を飲むと下痢をしたり、お腹が痛くなったりする人がいます。それはうまく消化できないためなのです。和の発酵食品が腸内環境を一番整えてくれるのです。

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